奥田英朗「オリンピックの身代金」角川書店
映画「オールウエイズ3丁目の夕日」が公開された頃から昭和30年代への郷愁を背景にしたものが多く目に付くようになったと思うのは自分だけだろうか?この「オリンピックの身代金」もそういう気配がする。昭和39年10月10日から開催された「東京オリンピック」を舞台にしたサスペンス。
昭和39年夏、オリンピックに沸きかえる首都東京。開催妨害を企む若きテロリストと警視庁刑事たちの熱い戦いが始まる−。(帯のコピー)
奥田英朗は好きな作家のひとり。自分的には初期の頃の「邪魔」「最悪」の路線が好きだったのだが、最近は「空中ブランコ」「インザプール」という軽妙路線に走っていたのが、やっと戻ってきたという感じ。軽妙路線も嫌いではなかったけど、この人は本来やはり犯罪ものを書いたほうが良いと思うのです、というよりお願いしたい。高村薫や宮部みゆきが違う路線に抜けていった後の空白というか空腹感を満たしてくれる作家が少ない中で、この路線は貴重だ。是非、これからもお願いします。
テロリストがテロリストになるまでの心情の遷移、動機の形成に若干不満は残ったけどラストに向けての盛り上げはなかなかドキドキさせてくれておもしろかった。当時の東京の風俗、風景も丁寧に描かれているし、地方と東京との経済的な落差、富裕層(当時そういう言葉はなかったけど)と貧困層との落差、それらの具体的表現も興味深い。
最近の昭和30年代への郷愁は、恐らく団塊の世代がリタイア時期を迎えて、少年期を懐かしく振り返る動きと、昨今の経済状況や、それ以前にも横溢していた閉塞感と対比するように、そんなに豊かではなかったけど未来に対する可能性を信じる事ができた高度成長時期の日本の黄金時代へ戻りたい、という気分が反映しているという説には同感する。
なんだ、もろターゲットじゃん。
昭和39年は戦後19年目。自分のオヤジは40台の働き盛り。不肖の息子はやっと中学生。過酷な戦争体験から19年を経て、オヤジがその頃何を思って働いていたのか知りたいと思う。自分の若い頃のチンケな体験ですら、それ以後の20年目の頃にはまだまったく吹っ切れていなかったのだからこそ、そう思うのです。なんて、これは少し前の項で書いた正月の沖縄旅行での気分が言わせてますね。
- 2009/01/07(水) 12:34:11|
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